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[As Seen On IDEAS FOR GOOD] 住宅街の小さな工場から、循環が始まる。割り箸が地域でめぐる文化を作る、ChopValueの挑戦

[As Seen On IDEAS FOR GOOD] 住宅街の小さな工場から、循環が始まる。割り箸が地域でめぐる文化を作る、ChopValueの挑戦

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日本で暮らしていれば、飲食店やコンビニエンスストアで目にしない日はないほど生活に馴染みのある割り箸。割るだけでいつでも清潔に使えて便利な一方、その使用時間はおおよそ5分から15分程度と短く、食事が終わればほとんどの場合はそのままごみ箱に捨てられてしまう。

実際に日本は、年間約200億膳、一人当たりにして150膳と、世界最大の割り箸の消費国だ(※)。パルプ原料としてリサイクルする取り組みも存在するものの、使い終えた割り箸の大部分がごみとして廃棄されているのが現状だ。

この課題に一石を投じる存在が、カナダ発の商業用家具や建材ソリューションを提供する循環型製造業ChopValue(チョップバリュー)だ。同社は、使用済みの割り箸を板材としてアップサイクルし、コースターのような小物から家具、内装材まで、幅広い製品を製造し、世界中で80カ所以上の分散型マイクロファクトリーを稼働中及び開発中だ。

そんなChopValueが、2024年夏に9か国目の拠点として日本に上陸。2025年4月21日には、神奈川県川崎市に設立された国内初のマイクロファクトリーにて、メディア向けのオープンツアーが開催された。本記事では、IDEAS FOR GOOD編集部が実際に現地を訪れ、ChopValueがどのように地域と共に循環型ビジネスを展開しているのか、その最前線をレポートする。

マイクロファクトリーの様子

マイクロファクトリーの様子 / Image via ChopValue

回収から製造まで地域内で。ChopValueの“グローカル”なビジネスモデル

ChopValueは2016年にカナダ・バンクーバーで創業された。外食産業から無償で回収した使用済みの割り箸を水性樹脂で固めて板材に加工し、そこからさまざまな製品を作り出している。

板材は滑らかなため使い手のニーズに応じて塗装などの加工も可能で、小さなパーツをつなげるモジュール式設計で製造の工程で素材の無駄を出さず、接合することで板材や什器に組み上げることができるのも特徴である。回収された割り箸は高温と高圧によって滅菌処理された上で加工されるため衛生面にも問題がなく、接着剤の成分を安全なものにするなど、製品の安全性にも配慮している。

同社がこれまでにアップサイクルした割り箸の総数は、2025年4月時点で2億本を超える。シェラトン・ホテルズ&リゾーツやケンタッキーフライドチキンといったグローバルチェーンの店舗のインテリアにも採用されるなど、製品のデザイン性や耐久性が高く評価されている。

ChopValueの製品一例

ChopValueの製品一例 / Image via ChopValue

最大の特徴は、製造を各地のマイクロファクトリーで行う、地域密着型のビジネスモデルにある。2025年現在、世界9か国に拠点を持ち、各地域で調達した割り箸を地域内で製品化するという、いわば“グローカル”な循環モデルを実現しているのだ。

この構想の背景にあるのは、ツアー当日も来日していた創業者のフェリックス・ボック氏の経験だ。グローバル規模の家具や自動車メーカーの大規模工場で勤務した経験を持つフェリックス氏は、遠隔地から資源を一箇所に集約して製品を作り、それをまた世界中に出荷していく集約型の大量生産のあり方に疑問を持ったのだという。

フェリックス氏「こうしたやり方は間違っている、なんとかして止めたいと強く感じました。そこで、必要最小限の設備で、必要最大限の価値を生むChopValueのビジネスモデルを構築したのです」

ChopValue創設者フェリックス・ボック氏

ChopValue創設者フェリックス・ボック氏 / Image via ChopValue

元・鉄製品工場をリノベーションして作ったという川崎の新たなマイクロファクトリーも、閑静な住宅街の住宅2棟分ほどの敷地に建てられた、小さな工場である。「以前働いていた大手家具メーカーの工場の100分1の大きさだ」とフェリックス氏。

しかし、その小さな建物の中で、回収した割り箸の滅菌から圧縮・成形・塗装といったすべての工程を完結できる。6〜7人程度のスタッフで運営でき、製造時も工場という言葉から想起される騒音や熱気などはほとんど発しないという。

景観的にも周囲に溶け込んでおり、シャッターが上がっていればふらりと立ち寄れそうな親しみやすさが感じられた。

回収された割り箸

地域で回収された割り箸。/ Image via ChopValue

マイクロファクトリーの様子

マイクロファクトリーの様子 / Image via ChopValue

川崎を選んだのは、「ものづくりのまち」だから。強いコミュニティも支えに

ChopValueは、日本への上陸を創業当初から視野に入れていたという。その理由は、割り箸の一大消費国であり、ユニークな職人文化やものづくり系の中小企業が残っていること。

そして、初のマイクロファクトリーの開業地として神奈川県川崎市を選んだのは、京浜工業地帯の中核として発展し、中小工場や下請け工場が密集する「ものづくりのまち」であったこと、また古くから交通の要衝でもあり「外から来たものを受け入れる気質」があったことなどが理由だという。

ChopValueのスタッフ

/ Image via ChopValue

さらに、強い地域コミュニティがあったこともこの場所で話を前向きに進められた理由だ。実際に、そうしたコミュニティとの密接な連携があったからこそ、同社の日本でのマイクロファクトリー開設は実現したと言える。

例えば、行政との調整や地域の人材紹介は、地域に根ざしてクリエイティブ制作や人材紹介を行うストーリー株式会社が担う。ChopValueのスタッフとして同社が支援する子育て中の女性たちを雇用するほか、ゆくゆくはそうした女性たちを起点に、マイクロファクトリーを活用した地域の学校での環境教育にもつなげていく構想だという。

他にも、多数の日本企業とパートナーシップを結び、地域の人々から愛称で親しまれる地元のキーパーソンも巻き込むなど、多くの地域の人たちがChopValueに関わっている。ツアー中にも、外資系企業でありながらすでに地域コミュニティに深く馴染んでいる様子が感じられた。

トラックと運転手

飲食店等から割り箸を回収するためのトラック / Image via ChopValue

関係者の集合写真

当日の関係者集合写真 / Image via ChopValue

目指すは100拠点。日本全国への展開を目指して

ChopValueは今後、マイクロファクトリーの拠点を日本全国へ展開していく予定だ。「観光地や都市部など割り箸の消費が多い地域を中心に、ゆくゆくは100のマイクロファクトリーを開設し、10万人の“循環職人”を育てたいと思っています」とフェリックス氏はビジョンを語る。

また、日本でのビジネスとしての持続可能性を担保するため、まずは企業向けに家具やインテリア商材を販売していく戦略だという。2025年4月末には、オフィス家具大手のコクヨ株式会社と連携し、ChopValueの内装材を用いたオフィス家具の開発や検証を開始していくことも発表した。

マイクロファクトリーの看板

/ Image via ChopValue

そもそも日本は割り箸の発明国だ。江戸時代に衛生面の配慮として料理屋が考案したことが発端だと言われており、考案された当初は竹や杉などの端材を利用し、木材資源を無駄なく使うという意味合いもあったとされている。

そんな割り箸が、海を超えてカナダからやってきた知見と技術に出会うことで、川崎の地から循環の旅を始めようとしている──その歩みは、使い捨ての時代を超え、割り箸の新たな文化となっていくだろう。

ChopValueのスタッフ

Image via ChopValue

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